サンジェルマン…。そこがどういうところか私たちイマイチ良くわかっているわけではないみたい。
「とりあえずお買い物できるんじゃないの?」程度。
国立美術学校の角を折れてとりあえず真っ直ぐ進んでみる。よくわからんなーと思いつつ適当に曲がったりして行ってみるとやがてサンジェルマン大通りにぶつかった。よさそうなお店はあるかしら~ときょろきょろしつつぶらぶら。
探してみるも、イマイチ、系統が違う。一応ガイドブックを持っていたので見てみるものの、やっぱりどうやら違う感じ。バッグが欲しいといっても街歩き用だから、かんたんな、安いのを探していたのだった。すいません、本当によくわかっていなくて。
教会を遠めに確認しつつ、移動した方が良さそうね、と再び川の方向を目指す。細い道に入っていってみると、なんだか楽しげなお店が賑やかに建ち並んでいる界隈に出た。食材店やお惣菜屋さん、小物を扱うようなお店もちらほら。ゆっくり眺めながら、のんびりと一応シテ島を目指して歩く。
そして、この頃だったかな。空模様が怪しくなり始めたのは。
カオルコ、ちゃんと折り畳み傘を日本から持ってきていたのに、そしてパリのお天気は油断がならないということは承知していたのに、傘はわざわざホテルに置いてきていた。使えない。
そのうち、通りがかりのアクセサリーや布製品を扱っているお店でお手ごろのショルダーバッグを見つけて、珍子馬さんご購入。見つかってよかった。
空が暗くなってきたと思ったら、ぽつぽつ雨が降り始めた。大降りにはならないので、気にせず歩くことにする。
美味しそうなお店がたくさんあって、なんとなくお腹もすいてきている。今思えばここでなんかご飯を食べておけばよかったのよ。なんでそうしなかったんだろ?
セーヌ川が再び見える頃には本格的に降り始めて、信号待ちの間書店の軒下で雨宿りしたりする羽目に。
しかしこれは本当にただの夕立だったらしく、一度ぱあっと降ってしまうと、じきに小止みになって、空が白っぽく明るみ始めた。
気温もやや下がって、ニットを着ているのでちょうどいい感じ。
目の前に架かる大きな橋を渡るとそこはシテ島。すぐ右側にノートルダム大聖堂が見えた。ちょうど鐘が鳴っていて、時計を見たら19時だった。
そろそろ薄く闇が下りてきて、視界も悪くなってきた。帰る算段をつけなきゃいけないかなーとぼんやり考えつつ、真っ直ぐ進み、橋を渡ってサンルイ島へ。
ここで、そういえば鳩子さんがあそこでアイスを食べて!と力強く語っていた事を思い出すも、お店の名前も場所もお互いうろ覚え。とりあえず橋を渡って一番最初に見えたアイス屋さんでアイスクリームを買った。うまい。十分うまいよ。
ちなみにそのアイスクリームのお店はベルティヨンだったと思うんだけど、当然ここはそのお店ではない。
アイスを舐めながらてくてく歩くと、前方の建物の壁が薄赤く染まっているのが見えた。珍子馬さんが「あれ!夕焼けじゃないですか!?」と言うので、ふたりで慌てて川を目指す。
建物にはさまれた細い路地を抜けて川沿いの道に出ると、右側が真っ赤に染まっていた。
パリではそんなに珍しくないのかな。私は珍しくて嬉しかったのではしゃいでしまった。
夕日をバックに写真を撮っていると、刻一刻と日が落ちて闇が濃くなっていくのがわかる。このあとあっという間に夜になってしまった。だいたい20時くらい。
今こうして記憶を呼び起こしながら地図と照らし合わせていくと、あー、あそこにアレがあったのか、とか、ここに行けばこれがあったのに、とか、思うことがたくさんある。でも、そう思えるのがそもそもあのでたらめなお散歩のおかげなんだよね。ちなみにベルティヨンはこのとき夕焼けを見た橋から真っ直ぐサンルイ島に戻って一番最初の角にあったもよう。そんなもんだよ。
さて、暗くなってしまったのでもういい加減帰らないといけない。たしかシテ島から真っ直ぐホテル近くまで帰れるバスがあったはず、と、カオルコのうろ覚えの記憶を便りにバス停を探す。
85番のバス停はうまいぐあいに見つかった。本数はそれほど多くないのかな。よくわからない。しばらく待っていたらやってきたので、乗り込む。
後ろの方の席につくと、お若い男女の集団がいて、けたたましい声で喋りつづけている。アナウンスなんか全然聞こえない。乗客はバス停ごとに次々乗り込んできて、時間帯もあってか、なかなか混んでいる。
下りるバス停の名前も当然うろ覚え。たぶんこれだったと思うんだけど~、と思いながら外を眺める。サクレクール寺院が斜め横に見えたあたりで「たぶんこのへん」と下りてみる。
…うろ覚えすぎた。
結論からいうと、カオルコの覚えていたバス停の名前は下りたいバス停から2つ先のもので、頭の中の停留所付近の地図と現在地が全くかみ合わなかったので、ホテルにたどり着くまでに全然違う所をぐるぐるめぐる羽目になった。
疲れ果てているうえ、お腹もすいてるし、頭が働かない。時計を見るともう21時を回っている。クリニャンクールとかバルベスとかそういう地名が見えて、これが見えたらいかんのじゃないかなーということだけ辛うじてわかったのだけど、なんにせよもう暗いし、初めて通る道だし。ようやくこのあたりで私の頭に、あんまり治安の良くない場所だという事実がちらちら浮かんでくる。
通りの名前を確認しながら、うろうろしつつ、下りたバス停まで戻ったところで、カオルコようやく頭の中の地図と地形にピンときた。「とりあえず坂は下るべきだ…」と気付く。なんとかホテルに帰る道程が判明した。くたくた。一応事前に調べていたのだけど、肝心のメモはホテルの鞄の中なのだった。どうしようもない。
明るい大通りまで戻ったところで、適当なお店に入ってようやくご飯。カオルコもう眠くてへろへろ。
入ったはいいけど案の定メニューがさっぱりわからない。珍子馬さんとこうじゃない?ああじゃない?といいながら考えるも、もうなんだかなんでもいい気分になっている私。
そんなこんなで、珍子馬さんがお隣の席に座っていたカップルの男性がいない時に、女性に聞いてみたところ、彼女達はイタリアからきている旅行者だった事が判明。女性は伊仏か仏伊かわかんないけど豆辞書みたいなのを出して、「これよこれ」みたいな仕草をしてみせた。
とりあえず簡単なコースのセットがあって、それを頼むと良いよと教わる。それがあたりだったか外れだったかも教えてくれた。彼氏も気のいい感じの人でとってもお似合い。メルシーはグラッツェでありがとう、という話をすると、リガトーニ!パスタ!とありがとうにウケるイタリア人カップル。私と珍子馬さんは「アリガトーニ」っていうパスタがあるのかーとそのときは思ってた。
珍子馬さんは前菜にエスカルゴを頼む。なぜなら隣のカップルにすすめられたから。私もひとつ貰って食べた。初めて食べた。珍子馬さん、メインはなんだったっけ?
私はお魚を食べた。クリームソースのサーモンだったかな。お味は、まあまあ。こんなもんかな、と。
このあたりは記憶も不鮮明で申し訳ないのだが、アコーディオン弾きのおじさんがテーブルに弾きに来た。アコーディオンだったと思うんだけど…。わー。もう本気で忘れかけている。
そんなふうにして何とか食事を終え、よろよろと戻ってから書いた日記を参考にこれを書いているわけだが、最後の方はもういろいろ限界で記述があっさりでいろいろ足りていない。
なにせ、料理が出てくるのにものすごく時間がかかって、眠気と戦いながらの食事だったので!
お店を出たら日付が変わっていた。
ホテルに戻り、シャワーを浴びて、寝たのは多分1時半くらい。
翌日もとても早起きの予定。
人通りはあまりないが、お昼の時間帯なので、通り沿いのカフェには人がたくさんいる。
お洒落げな日本料理のお店が途中にあって、満席に近い雰囲気だった。テラス席で食べている人もいて、チラッと見たら松花堂弁当みたいな感じでなかなか…。高そうだったけど。
それにしても皆さん普通にお昼からお酒を召し上がっておられるようだ。すごいなー。平日なのになー。
やがて、前方がやや開けて橋が見える。
高いビルが少なくて全体的に見通しがよく、目当ての建物なんかが遠くの方に容易に確認できるのであまり感じないが、ここまででも結構な距離を歩いているはず。だがこのお散歩はまだまだこんなものではおさまらないのだった。
アルマ橋付近まで行くとエッフェル塔が見えた。夜が綺麗だと聞いていたのだが、今回は残念ながら見ることは叶わず。
右前方はるか遠くにオルセー美術館が見える。このお散歩は「オルセーに行こう」という目的のもとに始まっているので、まあ、あそこまで行くんだね、と思う。
オルセーまでどう行くかという手段について珍子馬さんと話し合った記憶はないのだが、「セーヌ側沿いに歩いてみようよ」という話はした記憶があるので、この段階ではこれを実行している状況。
川沿いの、舗装されていない道に入る。入ったとたんとっても犬臭い。とくに何もないのでさくさく進む。左手に大きな建物がいくつか見えているので、あれは何かね、とか、あの橋はどれかね、とか地図を見ながら進んでいく。
アンヴァリッド橋を通り過ぎ、アレクサンドル3世橋を見ながら、「あれを渡ってあっちの建物見てみよう」ということに。
それにしても普通に歩いているだけで観光名所的なものがあちらからやってくるような錯覚。パリって本当に、見るものがたくさんあるんだなー、と思う。観光にはそれほど興味がなかったのに、気付けば「あれはなんだ?」ときょろきょろしてしまっている私。
心構えがなっておらずあまりに不勉強すぎて、グラン・パレとプチ・パレとわかってもそれがなんなのかさっぱり(今はわかってますけども)。
橋のこちら側にも立派な建物があって、それがアンヴァリッドだった。ということも、それがなんなのかということも、帰国後に確認している有様。まったくのダメ旅行者。パリに申し訳ない…。(凱旋門賞のことで頭がいっぱいだったのでゆるしてください)
左岸には戻らず、そのまま右岸をルーブル方向にてくてく歩く。風が多少強かったけれども心地よく、なんともいえずいいお散歩コースだった。お天気なのが第一条件だとは思うけれども。
周囲の木々はうっすらと染まり始め、日差しは強いけれどどこか秋の面持ち。残暑と初秋を行ったり来たりといったところだろうか。
私は日本から着てきたそのままの服装だったので、半そでに薄手のニットカーディガン、ジーンズにブーツという出で立ちだったのだが、日中はちょっと暑いな、と感じたが、空気がからっとしているのでとても過ごしやすい。日本でこれだけの日差しの中を歩いたら(すでに相当な距離を歩いている)、きっと汗みずくになっていることだろう。
途中でコンコルド広場をやや遠目に見て、オベリスクを確認。見ただけ。反対側にはブルボン宮。これも見ただけ。
川沿いの風景はとても美しく、木々の向うの自動車の流れすらなんだかいい雰囲気。その向うに見える建物も、なんだかわからないけどかっこいい。あの時は何にもわかっていなかったけれど、多分道の向こうにはオランジュリー美術館があったと思われる。カオルコにフランスはもったいなすぎだと思う瞬間。
ルーブルが近くに迫ってきたあたりで、いったん川の近くにおりて、対岸のオルセーを眺める。
下側から登って芸術橋を渡る。橋の上にはベンチもあって、人がたくさんいて、公園で過ごすみたいにのんびりしている。欄干の下に座り込んでいる人も多数。そういう場所なんだね。
というわけでようやくオルセー美術館に到着。時間はだいたい14時くらいだったかな。お昼を食べ終わってから延々歩き続けてこの時間です。
オルセーに行きたいと言ってたのは珍子馬さんで、以前来たときに見たニジンスキーのなんか(すません、よくわかんなくって)が一応お目当てだったのだけど、結局それは無かった模様。
入場料は7.5ユーロ。チケットを買って入口に向かうと、ドアの係と思しき黒人男性が「日本人?こんばんは」と声をかけてきたので、「こんにちはー」と二人で声を合わせて答える。だって2時だからね。男性はこんばんはとこんにちはの区別が不確かだったようで、「ボンジュール、こんばんは?」と聞いてきたので「ボンジュール、こんにちは。ボンソワ、こんばんは」と言うと、おー、と言って復唱していた。ついでに「メルシー、ありがとう」を復唱しあいつつ、入場。
私は絵のことは全くといっていいほどわからないので、眺めて「ほー、」と思うだけなのだが、それでも十分楽しいし、なんといっても美術館は広くて静かなのがいいな。そこで人の作ったものをただ眺めるというその行為自体はとても好きだ、と思う。たらたらと絵を見物する。名画と私、的な記念撮影をしている人が時々いる。見た記念なんだろうね。でもちょっと証拠写真ぽいなーと意地悪く思ってしまった。
学校の美術の時間に習ったような絵もちらほらあって、まあすごいわねえ、と思いながらぐるぐる回る。ドガの「踊り子」を見て、あー、これ初めて知ったの悪魔の花嫁でだったなあ、とか思う(浅すぎる)。そんな感じで、時々座って眺めたりしながらほぼひととおりは見て回ったかな、という頃、上階の屋外テラスに出てみる。遠くに見える町並みを眺めながらしばし休憩。
壁沿いにあるベンチの端っこに腰掛けてぼうっとする。風がとても気持いい。珍子馬さんは離れた所で煙草休憩中。ひとりでぼーっとしていると眠くなってくる。さすがにちょっと疲れている自覚あり。
すると、隣に座っていたご婦人が私に向かって、自分の手首あたりを差す仕種をして見せたので、「あー、時間ね」と思って、時計を見せて、直後、とんでもなく無意味なことに気付く。
「あー、ごめんなさい…えー、じゃ、じゃぱにーずたいむ…」と恥じ入りながら告げるとご婦人は笑って、逆側の隣の人に時間を尋ねていた。すみません、常にアホで。ずっとマイナス7時間ならぬプラス5時間で現在時間を確認していたのだが、こんなこともあるのか、と、後になってから時計を直した。この時点で15時半くらいだっただろうか。下のカフェでお茶でも飲みましょう、と珍子馬さんと移動。
私は冷たいカフェオレを頼み、珍子馬さんはアイスコーヒーを頼んだ。カフェオレは牛乳のおかげか多少冷たかったが、アイスコーヒーはあんまりだった様子。冷たい飲み物に氷を入れるという概念はないんだろうかと二人で疑問に思う。疲れてたので喉がカラカラだったのだ。でもこちらではアイスオレとか、もともとは存在しないらしい?よく知らないが。
下りながら彫刻を見たり(ロダン怖いとひたすら言っていた記憶あり)しつつ、オルセーを出たのは多分もう17時近かったんじゃなかろうか。
珍子馬さんの街歩き用のバッグを探そう、ということになり、なんとなくサンジェルマン・デプレ方面を目指す。